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東京高等裁判所 平成3年(ラ)187号 決定 1991年5月29日

抗告人

飯島藤平

抗告人

金沢昭二

右両名代理人弁護士

田見高秀

相手方

ダイア建設株式会社

右代表者代表取締役

下津寛徳

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

一本件抗告の趣旨並びに理由は別紙記載のとおりである。

二当裁判所も相手方の間接強制の申し立ては理由があるのでこれを認容すべきであると判断する。以下抗告理由に即して述べる。

1  抗告人らは、原決定には抗告人らに仮処分命令違反の事実がないのにこれがあるものと認定した事実誤認が存在する旨主張する。しかしながら、債権者の一定の行為の妨害を禁止する旨の不作為を命ずる債務名義の強制執行においては違反行為の存在は強制執行の要件でないことはもとより、執行開始の要件でもないと解するのが相当である。もっとも、債務者に違反行為のおそれもないような場合にまで執行のための決定を発する必要もないし、またその利益もないから、執行裁判所はこの点を判断することはできるというべきであるが、それ以上に、違反の事実があったことの証明まで必要であるとすれば、債権者は常に一度は違反による権利侵害を免れないということになって、せっかくの債務名義を得た意味がなくなってしまうからである(一回限りの妨害の排除が問題となる場合を考えてみるとよい)。このように、本件で間接強制を命ずる際においては、右仮処分命令違反行為の存否はそもそも原決定を発するについての要件とはなっていないのであるから(右仮処分命令違反行為の存在は、本件間接強制の決定を債務名義として債権者が損害金の支払の強制執行を求める段階で、執行文の付与を求めるために債権者が文書により、又は訴を提起して証明する必要があり、債務者において争う機会が与えられることになる。)、抗告人らの前記仮処分命令違反の事実についての事実誤認の主張は、主張自体失当というほかない。

2  抗告人らは、相手方に対しては町内会の役員として対処しているにすぎず、第三者たる町内の者のなした行為についてまで責任を取らせるのは違法である旨主張する。しかしながら、原決定は抗告人ら自身が妨害行為をなし、もしくは第三者をして妨害行為をなさしめた場合を対象としているものであって、抗告人らと無関係に町内の者のなした行為についてまで責任を取らせる趣旨ではないことは明らかであるから、抗告人らのこの点に関する主張は理由がない(ただし、このことは町内会の名目による抗議行動であれば抗告人らの行為に当たらないとする趣旨でないことは勿論である。)。

3  間接強制の場合の支払い金額については、すでになされている仮処分決定に違背する妨害行為により相手方の受ける損害、妨害行為の態様、程度等を総合的に考慮した上で決定されるべきところ、本件記録を検討すると本件工事に着手できないことによる相手方の損害が相当に高額と認められることに加えて、仮処分決定に至るまで、またその後の双方の紛争の程度、期間等を総合考慮すれば、原決定の認定額をもって違法不当ということはできない(抗告人らとして仮処分命令自体を争うことはともかく、仮処分命令が発せられた以上、その実効性を担保するに足りる金額を定めるべきであり、また抗告人らとしては、仮処分命令を遵守する限り、本件決定によって別段の不利益を受けるわけではない。)。

4  その他、原決定にはこれを取り消すべき違法、不当な点は認められない。

三よって、本件抗告は理由がないのでこれを棄却することとし、抗告費用は抗告人らに負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官上谷清 裁判官満田明彦 裁判官亀川清長)

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